ケアマネジャーの有料化

ケアマネジャーという仕事

プロフィールにも書いてあるとおり、私は介護に関連する仕事に従事している。職種はケアマネジャー(以下ケアマネ)である。あまりよく知らないという人も多いだろうから、簡単に説明すると、介護保険を利用する際に窓口となって各種サービスの相談や調整業務を行う仕事である。普段、自分が見聞きしていることは介護保険にまつわることなので、この分野からみた視点でブログの記事を書くことも多くなると思う。

ケアマネは介護保険保険制度と同時に出来た資格なので、比較的新しい職種と言える。介護保険を利用するとなれば、基本的に担当のケアマネがついて、いろいろと相談にのってどんなサービスが利用者に適切なのか考えてくれるはずだ。

有料化の思惑

さて今回テーマにしたいのは、ケアマネを利用するにあたって有料化になるかも…という話しである。現在はケアマネにケアプランを作成してもらっても利用料を徴収されることはない。ケアマネが所属する居宅介護支援事業所には、100%公費から利用者分の報酬が支払われるからだ。

介護保険制度は5年に1度大きな改正があるが、次回の改正(2021年)でケアプラン作成にあたって利用者負担を求める案が、にわかに現実味を帯びてきている。まだ協議段階なので決定しているわけではないが、特に財務省は導入に積極的なようだ。

財務省は「利用者が費用を負担することで、ケアマネジャーの業務をチェックするようになり、質の向上につながる」としているが、それは建前で、年々増加する給付費を少しでも抑制したいというのが本音であろう。

ケアプラン有料化では、「自己負担が発生すると、利用者の意向を反映すべきとの圧力が強まり、御用聞きプランが増える」という意見もあるが、現場感覚としてはこちらの意見の方が現実味が強い。利用者にとってベスト(だと思われる)サービスが、必ずしもその人の意向に沿うものでない場合も多い。意向に沿わないことを、創意工夫しながら何とか伝えるのもケアマネの大事な仕事だが、有料化によって御用聞きケアマネが重宝されがちになるという事態も充分想定できる。

しかし、なぜケアマネが有料化の対象とされるのか不思議である。利用者にとってみれば、介護保険は、公的サービスである。保険といえども、社会保険なので条件に当てはまれば強制的に保険料は徴収される。感覚としては税金と一緒である。

公費が投入されている他のサービス、例えば障がいサービスや保育サービスを利用するには、まず初めに役所で相談を受け付けるはずだが、その際相談料がかかるなんて聞いたことがないし、全国に張り巡らされた地域包括支援センターでも同様である。まさか、生活保護申請者に対してお金をとるような真似はしないであろう。

社会保障という括りでは、介護も障がいも生活保護も医療も同じである。生活のセーフティネットという役割はすべてに共通しており、そのために制度と利用者を橋渡しするための人員が配置されているはずである。しかしなぜか介護保険の導入部分だけは、自己負担が検討されている。どうしても取りやすいところから取ってしまおう、という思惑が見え隠れするのである。

目指す社会とは

今までも何度か介護保険制度は改正を重ねてきたが、その都度思うのは、表向きは自立支援という名目を掲げながら、支出を減らすという裏の意向が暗に強調されるのである。改正ごとに利用を抑制する制度変更が細々となされてきた。このような小手先の改革を重ねてきた結果、介護保険制度はかなり分かりにくい複雑怪奇な制度となっている。

何も私は自己負担が絶対ダメだと言っているのではない。社会保障を効果的に維持するには、何かしらの負担は必要であろう。ただし、どのような制度にするのか、社会全体を俯瞰した上での哲学がみえない。

持続可能性の確保とは、制度自体のことではないはずだ。人々の暮らしを持続可能なものにするためには、小手先の改革より、どのような社会にしたいのか、どのような社会を目指すのかコンセンサスが必要である。それがないと制度を利用する側も、提供する側も閉塞感が募るばかりであろう。


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