トンデモ上司の生態(3)

社会に潜むトンデモ上司たち

今回、事例に挙げたトンデモ上司たちは世間一般では珍しい部類に入るだろうか?僕が社会人になってから、今まで何人の上司の元で働いたか数えてみたら11人だった。

その中でトンデモ上司は3人、11分の3。約27%である。僕の場合で言うと、そこそこの確率で遭遇している。言っておくが僕自身は特別反抗的な態度をとるとか、仕事に対して真面目に取り組まないとか、少なくてもそういう人物でない。

他の上司の方々とは、それなりに友好的な関係を築いてきた。男性女性、年配年下などの属性は全く関係ない。トンデモ上司につくかどうかは、ほとんど運のようなものである。組織に属して働いている人なら、決して他人事ではないのである。

パワハラとトンデモ上司

メディアでは、近年パワハラにまつわる事件が数多く報道されている。例えば昨年(2019年)だけでも三菱電機の新入社員が自殺した件スポーツ界のパワハラ問題神戸市小学校の教員いじめ等々、枚挙にいとまがない。どの事件も深刻で根が深いようにみえる。最後の教員いじめ事件なんて呆れてため息しかでない。

きっと世の中には、上司に適していると言えなくても、たまたまその部署にはその人しかいなかったから上の地位に就いている、ということは往々にしてあるのだ。いずれにしても、社会にはまだまだトンデモ指数が高い上司が数多く生息しているわけで、何らかの対応策を講じておく必要がある。

温床となりやすい環境

トンデモ上司の温床となる環境は、主として意思疎通が一方的な職場である。自分たちの力を充分に発揮するには、上司が絶対的権力をもつ職場というバックボーンが必要である。さらに部下が仕事を容易に辞められない、という社会的背景があると、トンデモウィルスが生息しやすい環境は激増する。

比較的、今までの日本企業はそういった環境を作りやすい体質にあったといえる。終身雇用を前提とした人材流動性の低さ、命令どおりに業務を行う上意下達を重視する文化等、現在はだいぶ変化してきているとはいえ、残念ながらまだまだトンデモ上司が嬉々としていそうな職場は多い。でなければ、これほどパワハラがありふれたニュースにはなっていないはずである。

時代が求める上司像

しかしながら時代は急速に変化しており、トンデモ上司が生息しにくくなっているのも事実である。テクノロジーの影響を中心に社会環境の変化が非常に速くなっているため、その動きに臨機応変に対応できるように弾力のある組織体の重要性が増している。

そのためには、言われたことをそのまま行う人材より、その場の判断で自ら考える人材を活用したほうが的確に社会環境に対応できる。そういった人材を確保したいならば、トンデモ上司の存在は有害でしかない。なぜならば昨今、上司に求められているのは部下の能力を引き出せるような能力だからである。

具体的には、部下に適切に質問やコメントをして自ら考えさせるようコーチングの能力であったり、自ら動きたくなるように意欲を引き出す承認する力だったり、時には答えを急かさないで見守る忍耐力だったりする。一方的に自分の思い込みで指示する行為とは、真逆の能力である。

職場サイドからトンデモ上司をのさばらせない予防策としては、能力を引き延ばし育てられるような文化を職場に浸透させておくしかない。そうすれば、トンデモ上司がその地位に入り込む可能性は格段に少なくなる。もちろん地道に職場の教育体制を整えていく必要があるので、決して楽な作業ではないが、長い目でみれば組織として変化に対応できる基礎体力を着実に積み上げられる。

部下のパフォーマンスは上司の責任

職場環境を働きやすくするかどうかの裁量は、部下より上司の行動や判断にかかる部分が圧倒的に多く、であれば部下のパフォーマンスの結果の責任の多くは上司にある。

確かに、部下によっては著しく仕事が出来ない、ということもある。ただそれは職場や仕事との相性であったり、部下個人の資質の問題であって、仕事が出来ないからといって上司が感情的になってしまってはいけない。ましてや人間性を否定したり、高圧的な態度をとっていい理由には全くならない。

現状としては、終身雇用はほぼ崩壊してきているし、人手不足で人材の流動性も増している。ますますトンデモ上司にとっては生息しにくい世の中になってきていると思うが、まだまだ遭遇してしまうリスクはあるというのが僕の実感である。楽なほうに流れる人間は必ずいるし、人手不足といった社会情勢もいつ変わるかわからない。

では不幸にも遭遇してしまった場合、どうしたらいいだろうか?

トンデモ上司に遭遇したら

その職場から一刻も早く離れる

端的に言えば逃げることである。僕の経験上、これが一番人生にとって最良の選択だと思っている。

仮に僕が再度トンデモ上司の元についた場合、かなりまずい状況に陥ったと相当な危機感を持つだろう。具体的にはすぐにでも異動を願い出るか、もしそれが叶わない状況であれば退職を考える。

実際、過去にサイコパス上司によって散々な目にあった僕は、その後カリカリ上司やオラオラ上司に遭遇した時には早めに処置をとってその場から逃げた。

そうすることで自分のストレス値は大幅に下がったし、その後も支障なく仕事は出来ている。逃げた、というと響きが悪いかもしれないが、自分の生命を守るためには当然の処置をしたまでである。

サイコパス上司の元にいた時の自分は、仕事人としての向上心がゼロに等しく、生きる屍のようだった。無為な日々を過ごしてしまったことをとても後悔している。残りの人生で、もう二度とトンデモ上司に対して神経を使うような時間を費やしたくない。本当に強くそう思う。

なので、今現在トンデモ上司によって苦しんでいる人がいるならば、(特に若い人は)早めに見切りをつけてもらいたい。後になって僕のような後悔はしてほしくないのである。

留まり続けることのリスク

こういうことを言うと、気にしないで適当にあしらえなかったのか、とか仕事に対する根性が足りないのでないか、と思う人がいるかもしれない。

トンデモ上司をウイルスと喩えれば、確かに人によって免疫が強い人がいて上手く立ち回れる人もいるかもしれない(僕は耐性がとても弱いほうである)。そういう人たちにまで、僕は無理に職場を変えることを勧めるつもりはない。

ただ耐えたところで、その職場で何か実になる能力を得られるかはよくよく考えた方がいい。所詮、トンデモ上司が跋扈できるような職場なのである。留まることに大したメリットがあるとは思えない。

トンデモ上司に対するリスク回避として、免疫力を強くしようとする方向で頑張ろうとする人がいる。例えば、あまり気にかけないように平然を装うとか、ひたすら業務だけにフォーカスしようとしたり、という具合である。

サイコパス上司のいた職場でも、そういう人たちがいたが、例外なく彼からのダメージを受けていた。そんな小手先のテクニックが効かないから、トンデモ上司なのである。彼らの負のパワーをなめたらいけない。

普段からできる予防策

僕の思う最大のリスク回避は、その職場から少しでも早く距離をおくこと。そして離れた後に予防策として個人でしておくべきなのは、普段から自分の価値を高めておくことである。そのほうが、よほど有意義な時間を過ごせる。

先ほど述べたように、今後の時代は、自ら考え判断し行動できる能力が重要視されるようになる。新しい付加価値を生み出すためは、どうしたらいいだろうか?そのような意識をもち普段から自分の業務にあたることである。別に組織の業務に限ったことではない。副業や趣味等含め、人生で挑戦できることはたくさんある。

きっとそれが出来ればどこの職場にいっても通用する人材になれる。万が一トンデモ上司に遭遇したとしても、迷うことなく自分にとって最善の道を選びとることが出来るだろう。

トンデモ上司の末路

最後にトンデモ上司たちがどういう末路を辿ったか述べてみたい。カリカリ上司に関しては、風の便りでは所属組織と何かしらのトラブルで裁判沙汰になり退職した。オラオラ上司に関してはどうなったか知らない。ただ所属会社は、当時よりだいぶ規模は小さくなったようである。サイコパス上司は、僕が退職願を提出した後に、数々の悪事が露見したのか、あっという間に施設から姿を消した。おかげで僕は何の問題もなくケアマネジャーの受験資格を得ることができた。

今、思い返してみるとトンデモ上司たちは、仕事に対してとても一生懸命に取り組んでいた。ただしその一生懸命さが逆に部下にとって仇になっていた。間違った価値観や考え方のせいで、組織のためになっていないどころか結局彼ら自身のためにもなっていなかった。

僕にとっては何もポジティブなことを生み出さなかった体験だったが、部下を持つ立場となった今では、せめて他山の石として、トンデモ上司たちの思考や価値観の真逆のことを実践するよう、自分に課すようにしているのである。

このシリーズのまとめ
‣トンデモ上司とは、大真面目に仕事に向き合うが、その向き合い方が常識とはかけ離れているため、著しく職場に不利益をもたらす人物のことをいう。
‣カリカリ上司は、いつもカリカリしていた。
‣オラオラ上司は、部下に対してオラオラしていた。
‣サイコパス上司は、人を石ころとして扱っていた。
‣トンデモ上司は、人を感情的に好き嫌いで分類する、部下は組織(自分)の命令に服従するのが当然という思考に陥っている、問題がある職場環境に生息しやすい、などの特徴がある。
‣世の中にはパワハラ事件も多く、トンデモ上司に遭遇する機会は決して少なくない。
‣社会状況の変化で、自ら考えて行動する能力を伸ばすことが上司に求められるようになってきている。
‣組織として、部下の能力を伸ばせる職場文化を作り上げることで、トンデモ上司の介入をある程度排除できる。
‣トンデモ上司についてしまったら、いち早くその職場を抜け出すことが最良策である。
‣普段から自分自身の市場価値を高めておくのが、個人として最大の予防策である。
おすすめの記事