性差から社会を読み解く(1)

3つの脳

爬虫類脳、哺乳類脳、人間脳

人間は、3つの脳を同時に併せ持っているとする「三位一体脳(triune brain)」という仮説がある。すなわち爬虫類脳、哺乳類脳、人間脳という3つの脳が、下の図のように3層構造を成している、という説である。

簡単にいうと爬虫類脳というのは、反射脳のことであり大脳基底核や脳幹等から成り立ち、生命維持に関わること、例えば、呼吸、食べること、性行動等を司る


その爬虫類脳を囲うように哺乳類脳があり、それは大脳辺緑系で成り立っており主に喜び・怒り・恐怖等感情面を司る。いわゆる感じるための脳である。

人間脳は、さらにその2つの脳を覆いかぶさるように、大脳新皮質から成り立っていて、言葉や音楽の理解や、創造的な思考能力にかかわる、いわば考える脳で人間を人間たらしめている脳とも言える。

社会を成り立たすため、欲求を人間脳で抑え込む

この3つの脳の中で、一番根源的な脳は爬虫類脳である。そもそも全ての生物は、生き残ろうとする本能が備わっているのであり、その欲求が一番強いと言える。ただ想像してみれば分かるが、爬虫類脳だけではルールや規律が理解できないだろうから、とてもではないが人間のような社会性は成り立たない。

そこで人間は、人間脳で何とか爬虫類脳の強力な欲求を抑え込み、また社会制度のような仕組みを作り上げることで、人間全体の生き残りを維持してきた。

ちなみに最近の研究では、哺乳類以外の魚類、両生類、鳥類、爬虫類にも外套と呼ばれるいわゆる新皮質に相当する領域があることが分かってきており、純粋な意味での三位一体脳説は否定されつつある。つまり爬虫類であっても、一定の学習能力があり、生命維持だけをその性質としているわけではないらしい。

とはいえ、人間の学習能力、考える能力は、他の動物の比ではないことは明らかだろう。人間はその存在が生み出された時点から生命維持の爬虫類脳、そして感情表出の哺乳類脳が本質として備わっていた。本質的な性質であるがゆえに、人間の根源的なところでは欲求が渦巻いているのである。

しかし人間社会を成り立たせるためには、生命維持、感情表出といった強烈な欲求を、おとなしく飼いならすしかない。いわば人間の歴史とは、爬虫類脳、哺乳類脳といかに上手く付き合っていくか、試行錯誤の積み重ねであったとも言える。

生命ーその根源

人間の最も根源的な欲求は、よく三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)と言われる。爬虫類脳が大きく影響している生命維持の分野である。今回はその中でも性にまつわる欲求についてスポットを当てて考えてみたい。人間社会の文化に、圧倒的な影響を与えているからだ。

その前にまず生命とは何か?と考えてみたい。生きるということをシンプルに考えるなら、ただ存在していればいい。でも永遠には生きられないのが生物である。未来に存続するためには、子孫を残すしかない。しかし子孫を残すのに、本当に雄雌が必要なのだろうか?生命をそのまま繋ぐだけであれば二つ性があるより、単性のほうがややこしくなくて安定するのではないだろうか?

事実、地球に生物が誕生してから10億年間、生物はすべて単性だった。生物は雄雌の交わりもなく、その個体の力だけで子を産み、次の世代へその連鎖を繋ぐことが出来た。個体そのもので命をつぐむことが出来るので、生命としては完成体といっていい。そしてその生命は子を産むことが出来たのだから、すべて雌だったとも解釈できる。

雄の出現

ただ長く続いた平和な期間を経て、地球環境に様々な元素が出現し、気候や気温の変化が激しい自然環境へと変貌していく。そうなると単性生物にとって不利な条件になる。単性の場合、同じ子孫をコピーのように作るには問題ないが、環境の変化に対応するには、生物自体も順応しなければ存続ができない。

多様性と進化、このために雌は雄を必要とした。違う個体が交わることで、生物の性質を多様性あるものに変化させ、厳しい地球環境に順応しようとしたのだ。生物内に多様性があれば、平均的な個体が淘汰されたとしても特殊な性質をもつ個体は生き延びるかもしれない。生き残りをかけて、いわば苦し紛れに雄を作り出したともいえる。

雄とはなんであろうか?キーワードは「変化」である。変化には進化、創造、変革が不可欠である。生物の進化の過程からすると、雌こそがその原点であり、雌を存続させるために突然変異として現れたのが雄なのである。そうして地球上の生物は、多種多様な自然界を作り上げてきた。人間とて例外ではない。脈々とそのDNAは我々の爬虫類脳に組み込まれているのである。

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