時価総額ランキングから社会を読み解く

世界時価総額ランキング

まず下の表を見てほしい。平成元年と平成30年の世界の企業の時価総額ランキングである。比べてみると、いろいろな面で示唆に富む表であることがわかる。

平成元年、日本はバブル期の絶頂にあり、ランキング50位中半分以上は日本企業が占めていた。今見ると隔世の感を禁じえない。それと比べ平成30年のランキングの上位はアメリカと中国系の企業が占め、ランキングに残っている日本企業はトヨタ自動車のみ。時価総額の視点からみると日本企業の凋落ぶりは一目瞭然であるが、その背景にあるものをもう少し探ってみたい。

バブル期には、日本及び日本企業の特異性が、経済の成功要因として語られることが多かった。例えば終身雇用、技術力の高さ、勤勉性等々。確かに当時の実績をみると製造業においては、自動車や家電商品が世界的な売り上げを伸ばした。金融系の企業は、潤沢な資金を得て日本国外の不動産、リゾート、企業への投資・買収を行った。

しかしランキングの上位を独占していた銀行は、その後合併を繰り返し、周知のようにいくつかのメガバンクに収斂された。海外の不動産買い漁りに積極的に手を伸ばしていた当時の面影は今はない。時価総額が優良企業の指標とは必ずしもいえないことの証左である。

人口ボーナス

ジャパンマネーが世界を席巻していた時代は確かに存在した。しかしそれは、日本企業の特異性に理由があるというよりも、時代に求められたニーズと社会構造がうまくマッチしたことに要因があるように思える。僕が一番説得力ががあると思っているのが、人口ボーナスという考え方である。

人口ボーナスとは、子どもと高齢者の数に比べ、働く世代の割合が増えていくことによって、経済成長が後押しされること。豊富な労働力が経済活動を活発にし、稼いだお金の多くを、子どもの教育や高齢者の福祉より、新しいビジネスに回すことができる。

朝日新聞掲載「キーワード」

高度成長期からバブル期にかけては、日本の人口形態は、労働人口が多く高齢者や子どもの数が少なかった。人口自体も先進国ではアメリカに次いで多かった。高齢者や子どもに必要な社会保障にあまりお金を使わずに、大量の労働人口を動員して生産を上げることに注力でき、海外でも大量にモノが売れるようになった。バブルがはじける直前には金余りの状態になり、行き場を失ったマネーが金融機関に溢れ混んでいた状態だった。

企業に求められる変化

もう一つ要因を挙げるとすれば、産業構造の大きな変化である。これは日本だけではなく世界的な潮流である。先ほどの表をみると現在、最も利益を生み出していると見られるのは、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれる巨大IT関連企業である。これらの企業はモノを作るというよりは、人とモノを結びつけたり、人と人のコミュケーションの新しい形を提供したり、新しい価値を創造するサービスに主眼を置いている。

バブル期頃までは、世界的にみるとまだまだモノが充足している状況ではなく、モノに対するニーズが高かった。しかしマネーが流れこむ業界が、以前はモノ作り関連が中心だったが、現在はもっと多様化している。別にモノ作りが衰退しているわけではない。トヨタも33年前と比べて4倍近く資産を増やしている。市場としては確実に伸びている。ただし、それとは比較にならないほど新しい価値を生み出す企業が飛躍を成している。ある程度モノが充足してくると、人はより楽しく生きたり、意義あることに目を向けるようになる。少なくても世界は少しずつ豊になってきており新しいサービスを求めているのである。

日本の行く末はいかに

さてここで日本に目を向けると、かなり切羽詰まった状況にあると言える。人口ボーナス時代はとっくに終わり、むしろ世界に類をみない未曾有の超高齢化社会に突入している。少ない労働人口で生産性を上げると同時に高齢者世代を支える、という難題に直面している。しかし産業構造自体は、30年前と比べてドラスティックに変化しているかといえばそうでもない。

さらに日本にとって試練となるのは、①人口ボーナスがある国が今後多様化すること(インド、インドネシア、アフリカ諸国等が今後本格的な人口ボーナス期を迎える。ちなみに中国は2030年頃までボーナス期が続き、その後急速に高齢化が進行するとみられている)②インターネットによって競合の土俵が標準化し、競合相手が激増している、という点である。つまり先進国間で競争をしていた時代はとっくに終わっており、世界中の人々が同じ土俵で様々なアイデアをだしてせめぎ合う時代になっているのである。

まさに二重三重のハンデを負いながら社会を支えていかなければならない。一刻も早く何かしら抜本的な手立てを打たないと、とてつもなく暮らしにくい社会になることが充分に想像できるのである。

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