
糖質制限を実施する背景
糖質を制限するダイエットは多くの人にとって、実施に困難を伴う手法である(糖質制限と健康管理(前編))。「食べる」ことは、三位一体脳でいう爬虫類脳(反射脳))が司っており、人間にとって最も根源的な行為である。言ってみれば、生物として生存するための行為であり、それ故に意図的に制御するのが難しい。
とはいえ、野放図にその欲求をおもむくままにしていいか、というのも別問題である。世の中には、当然ダイエットに無関心な人もおり、好きなものを好きなだけ食べて死にたいという人もいる。惜しみなく快楽を享受したいというのも一つの生き方であり、それはそれで否定しない。
そのような生き方を自ら心の底から望んでいるなら別にいいのだが、単に面倒だからそうしてる人も多く見受けられるのである。ただそれほどまでに本当に糖質を欲しているものなのか、そうまでして摂取すべきものなのかは、一度立ち止まって考えてみるのも悪くない。
「食」は人間にとって本質的な欲求であると同時に、社会的な行為である。環境によって、知らず知らずのうちに不自然に誘導されていること、というのは意外に多い。食に限らないが、我々が当たり前にしている行為が、実は教育や宣伝によってそう思い込まされていたり、昔からの習慣で漠然と続けているだけだったりすることが思いのほかにある。
また職業柄、糖尿病でからだを悪くする人を見る機会も多い。糖質を大量に摂取したらイコールで糖尿病になるかといったら、そうではないが、やはりリスクが高くなるのは事実である。糖尿病そのものもそうだが、網膜症、腎症、神経障害等の合併症は怖い病気である。失明、人工透析、手足の壊疽等の恐れがある。できれば、そういう事態は避けたいと強く思うのである。
個人的な手法
僕が実践している手法を述べてみたい。僕は厳格な糖質制限主義者ではない。普段は、夕食で主食を抜かし、一日を通じて糖分を含む飲料を飲まない程度である。夕食にラーメンやカレーライスは食べないようにしているが、我慢し過ぎて反動がきてもまずいので、昼食はあまり気にしないで食べている。
どの食材にどのくらい糖質が入っているかを、ざっくりとでも把握しておけば前後の食事で糖質の量を調整できる。それも一週間くらいのスパンで辻褄があえばいい。その程度のアバウトさである。
慣れてくれば、制限することがそれほど苦ではなくなる。以前は甘いコーヒーやジュースが大好きだったが、今は全然飲みたいとは思わない。ビールも、糖質オフのサワーかノンアルコールビール(発泡酒)で代替出来ている。
運動をしたほうが、よりダイエットの効果がでるので、意識して週1回を目安にジムに行く。本来運動が好きではないので、なるべく短い時間ですませたい。それならば大きめの筋肉を集中的に鍛えれば、それだけ基礎代謝の消費量も増えるはずである。
というわけで大きめの筋肉である背中、胸、太もも等を中心にトレーニングをして、あとは有酸素運動で脂肪を燃やす。よく考えてみればわかるが、お腹だけピンポイントで脂肪を減らすことは出来ない。太るときや痩せる時は、身体全体的に脂肪が増えたり減ったりするわけである。以前僕がやっていたように腹筋運動だけ一生懸命やっても、ほとんど意味はない。
なので今は腹筋運動はほとんどしていない。しなくても効果があるのが実践してわかったし、くどいようだが、筋トレは短く済ませたいのである。そのかわり有酸素運動をする時は同時に音楽や動画、読書を楽しむようにして、なるべく心理的負荷がないように工夫をしている。
継続するための考え方
人生において何かしらの成果物(例えば趣味を極める、能力を伸ばす、ビジネスで成功する、結果を出す等)を得るためには、戦力的に考えて行動することが物凄く重要だと思うのである。何も考えずにやみくもに努力しても、大抵は効率が悪い。
その努力の仕方がいいのかどうかという点を見極めるには、物事の背景を理解しておくと判断しやすい。例えばダイエットなら、糖質が脂肪になるメカニズムであったり、人が糖質を求めてしまう歴史的社会的背景等がそれにあたる。この辺りは人によって違うので感覚的に行動するタイプの人もいるが、僕は納得しながら動きたいタイプである。理屈が分かると行動の方向性の微調整もしやすい。
ただ根性論で糖質を制限して運動をすればいい、と自らを鞭打ってもそうそう長続きはしない。人の性質からすれば、むしろそれが当たり前である。続かないのが普通ならば、根性で乗り切るよりも行動を習慣化する工夫をしたほうが成功率は高くなる。
継続することに重要度があるとすると、ある程度、緩さを設けておくことも大事だし、どこかで遊び心を満たす余裕があったほうがいい。例えば、何日間か継続できたらご褒美を自分にあげる等、ゲーム的要素を入れたりするのも一つの方法である。自分が出来そうなルーチンに、上手く行動をはめ込むことが出来たら、それを繰り返すだけである。
幸いなことに糖質制限においては、自分自身の体重、体脂肪といった客観的数値を常に調べることが出来る。定期的に数値を計ることで、自分の行動の結果が正しかったかどうかわかる。それが、自分のやり方が正しいかどうかのバロメーターであり、戒めであったり、自信に繋がったりする。
僕自身、5,6年上記のような食事と運動を続けているが、体脂肪や体重が大幅に減っているわけではなく維持が出来ているだけである。でもそれで充分である。体力を使う仕事をしているわけでもないし、ムキムキになる必要もない。健康を維持するためにしているのである。その目標を維持するために逆算して何をすればいいか導き出したのが、今の僕の手法である。
健康管理の副次的な成果でいえば、滅多に体調を崩さなくなったし、以前より腰痛で悩まなくなった。前は頻繁に腰痛(ギックリ腰)になり、一週間以上痛みが続いていたのだが、今はほとんど腰痛にならないし、なっても2、3日で回復する。仕事の内容や心理的ストレスが、以前と大きく変わったわけでないので、食事運動の習慣以外の原因は考えられない。
得られる効果が、思いのほか大きかったので、糖質制限と運動を継続するモチベーションも維持し続けられる。ただこの方法は、僕の体質、現在の年齢にフィットしたというだけであって、他の人にあてはまるかどうかはわからない。結局は自分でトライとチェックを繰り返して、自分の合う方法を探り当てるしかないのである。
前述したように人生で何かしらの成果を得るには、戦略的に考え行動することが大事である。物事の背景を見極める、目標に対してどのような行動をしたらいいか考える、効率のいい手段をトライアンドエラーを繰り返しながら探し出す、継続して続けられるよう習慣づける、行動の工夫を凝らす、時々結果を客観的にみて手法が正しいか振り返る等々、ほとんどのセオリーが、糖質制限と運動(健康管理)には詰まっている。普段からそのようなセオリーに慣れておくと、いろいろな学びがあると思うのである。