BABYMETAL アイドルとメタル論(1)

BABYMETALの魅力

ビルボードチャートにおける快進撃

10月11日に世界同時発売した、BABYMETALの3rdアルバム「METAL GARAXY」が米ビルボードでアルバム総合チャートで13位にランクインした。日本人アーティストとしては、1969年に坂本九が記録した14位を56年ぶりに塗り替えたとのことだ。

ビルボートチャートは海外での人気を計る一つの指針であり、それだけが判断基準ではないが画期的な記録であることは間違いない。自分も早速アルバムを買って聴いてみたのだが、個人的な感想はあとで述べるとして、何故これ程までに海外でBABYMETALが評価を受けているの考えてみたい。

その前にBABYMETALとは何か,簡単に説明すると「アイドルとメタルの融合」をテーマに結成されたユニットで、ヘビーメタルのサウンドをバックで演奏し、3人組の女の子がアイドル風に歌って踊るというパフォーマンスを基調とする。そのパフォーマンスから、いかにもイロモノ扱いされがちだが、ネガティブな意味ではなく個性的といえばかなり個性的である。

BABYMETALとの出会い

僕はもともとヘビーメタルが好きで中学生の頃から聴いていたこともあり、その手の音楽に拒否感はないが、何となくその存在は知っていたものの、ずっと手が出せずにいた。歳を重ねるとなかなか新しいものを吸収するスピードが鈍化するという事情もあったが、やはりBABTMETALの出で立ちだけを見るとアイドルそのものなので、いまいち楽曲を聴くという気が起こらなかった。

2、3年前のことだったと思うが、テレビでマーティ・フリードマンがBABYMETALを絶賛していたり、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードと共演したというネットニュース等(いずれもメタル界の中心で活躍した人物である)をみるにつけ、試しに少し聞いてみるかと思ったのがきっかけである。

そしてレンタルCD店で借りたファーストアルバムを聴いたのだが、のっけから破壊力のあるパンチをくらってしまった。まず始めに流れてきたのは「babymetal death」というインストナンバーだが、明らかにメタリカの”one”を意識したようなイントロから、スピーディで重厚なリフを刻み始める。どこか初期のメガデスを彷彿とさせるようなダークで疾走感のあるサウンドは、まさにヘヴィメタルのそれである。

さらに驚嘆すべきなのは時々挟み込まれる女の子たちの掛け声?である。

「su-metal death!」

「moametal death!」

「yuimetal death!」

え?なに、これ。自己紹介?

頭の中で驚きと興味と半笑いが交差する。まさか「death」を「です」にひっかけてくるとは思いもよらなかった。こんな調子で(どんな調子だ)アルバム全編にわたってメタルの曲調に合わせて、天真爛漫なアイドルの歌声が鳴り響くのである。この冗談なのか真剣なのかよくわからない行為を、絶妙なバランスとして維持せしめているのは、曲のクオリティと圧倒的な演奏力の高さである。

BABYMETALの特徴

これでクオリティが低ければ、単なるバッタものである。しかし「神バンド」と呼ばれるバックバンドには一流のミュージシャンが参加していて演奏技術は抜群に上手いし、su-metalの歌唱力も明らかにアイドルの域を超えている。その技術は、圧倒的なそのライブパフォーマンスで実証されている。

女の子3人ともあんなに激しい振り付けで踊りながら、よく歌えるなぁと感心する(記事の最後に、ファーストアルバムからの楽曲「babymetal death」と「catch me if you can」のライブ動画を貼り付けておく。BABYMETALの技術の高さは充分確認出来るはずだ)。

ひととおりアルバムを通して聴くと、曲をプロデュースした人物はヘヴィメタルに深い造詣を持っていることがわかる。ただ単に激しい音楽をつくったわけではなく、既存のメタル曲の片鱗を随所に散りばめられている。

そういったリスペクトを込めた楽曲の上に、アイドル性をうまくブレンドしているのだ。結局のところ知らず知らずのうちに僕はその魔力に囚われ、何度も繰り返し楽曲を楽しむ羽目になる。

もともとヘヴィメタルとアイドルの楽曲は、相性がいいと言われていた。サビのキャッチーなメロディーや、合いの手の入れやすさ等、どちらのジャンルにも共通する特徴である。それらの特徴をすべて計算して上手く融合させたのがBABYMETALと言える。

アイドルという背景

これまで述べてきたようにBABYMETALは規格外の存在である。しかしそれ故に反発も大きい。海外で人気があるといっても、実際には賛否両論が渦巻いている、といったほうが正確なところである。熱狂的に支持する人がいる反面、こんなのはメタルではないと眉をひそめる人も多い。そしてどちらの言い分も僕にはよく分かるのである。

BABYMETALのようなユニットが生まれた背景には、日本のアイドル文化を抜きには語れない。日本に住んでいればアイドルというジャンルが芸能分野で大きな比重を占めていることに異論はないだろう。

男性アイドルはジャニーズ事務所が幅を利かせているし、女性アイドルグループはAKB、モーニング娘、おニャン子クラブ、キャンディーズ等、時代を遡ると次から次へと生み出されてきたのが分かる。

誤解を恐れずに言えば、女性アイドルグループに関して求められてきたのは「女の子」という象徴性である。それは見た目の幼さや可愛さであったり、性格の純粋さといった偶像であって音楽性は全く別ものである。

僕はもともとヘビーメタルを好んで聴いてきたと述べた。学生になって60年、70年代のロック、ヒップホップ、クラシック等、幅広く音楽を聴くようになったが、アイドル音楽には全く興味が湧かなかった。偶像から生み出される音楽は、僕の好む音楽とは対極に位置するものと思っていたからである。それは音楽性というよりも音楽に対する姿勢、アティチュードの違いである。

BABYMETALに対する一つの意見

その辺りをどのように説明しようか考えあぐねていたら、海外のメタル雑誌の記事でBABYMETALに関して興味深い指摘をしているものがあったので少し長いが引用してみたい。

BABYMETALは商業的なプロジェクトだ、それをメタルと呼ぶことはできない。

彼らの音楽を楽しいと感じることもあるかもしれない(私はそう感じないが)、そしてそう感じる多くの人がメタルキッズなのかもしれない。

BABYMETAL。だが、メタルではない。

ひずむギターを除いて、ヘビーメタルバンドの特徴が欠けているのだ。

お金を生み出すために生まれた音楽。それゆえシンガーがその音楽を好きでなくとも大した問題ではない。彼女たちが作曲しようが歌詞を書こうが、そんなことは重要ではないのだ。それにパフォーマーの踊りが歌と関連付けられていようが大したことではない。彼女たちが18歳を過ぎれば入れ替えることだって可能なのだ。ファンはいずれにしろお金を払うのだから。

ヘビーメタルはブラックサバス、ディープパープル、レッドツェッペリンのような伝えるべき何かを持っていた人たちによって生み出された。彼らは大声で叫ぶ必要があり、その声をより大きくするためにひずむギターを使う必要があった。彼らの話を聞こうとする全ての人が、伝えようとすることを感じられるように。

(中略)

メタルバンドとはメタルサウンドを楽器で鳴らすことをいうのではなく、演奏する人の情熱を指す。

BABYMETALの金目当てのギタリストが一流の腕前だったとしてもそれは問題ではない。例えジョン・ペトルーシよりも鋭い音を出せたとしても、それでもまだ彼らは金目当てのミュージシャンだ。彼らは同じような音を出せる才能のあるミュージシャンとならば交換可能な存在なのだ。

私にみせてほしい、君が初めてロニージェイムズディオを聴いたときのように、涙が溢れ、心が震えた、そんなシンガーを。

私にみせてほしい、君の兄さんが初めてスレイヤーのレコードを聴かせてくれたときのような、血がたぎった、そんなギタリストを。

このミュージシャンたちは代えのいない存在だ。長い間金を生み出すという意味では、BABYMETALも同じだが。

BABYMETALは良いことなのかもしれないし、そうでないのかもしれない。音楽はジャンルで語られるものではない。その音楽の持つ喜びで語られるものだ。そしてそれは人それぞれ、ということなのかもしれない。だから私はBABYMETALについて良い悪いを言うことはできない。ある面においては素晴らしいし、他の面では耳が痛いということになる。

だが、それでもBABYMETALをメタルとは呼べない。メタルとは何も関係がないのだ。だからそもそも”メタルに起こった最高の出来事”ではないし、最悪の出来事でもない。

BABYMETALはメタルではなく、ポップスだ。

お金を生み出すために生まれた音楽とは、なかなか痛烈な批判である。BABYMETALに否定的な人たちが持つ、比較的一般的な意見でもある。この記事では、いわゆるアイドルとメタルの音楽の成り立ちの違いが明確に語られている。僕が感じていたアティチュードの違いも、上記の意見とほぼ重なる。ただ主張の全てには同意はできない。

よく読めばBABYMETALを批判しているというよりはメタルとして括ってほしくない、という意見である。良くも悪くもBABYMETALの成り立ちは、いかにも日本的である。

だからと言ってもちろん否定されるべきものでもないし、むしろ大いにかき乱してほしいと思うくらいだ。ある程度、地位を確立することに成功したこのユニットは、今後さらに旋風を巻き起こせることができるのだろうか?

BABYMETAL (2014年2月)
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