BABYMETAL  アイドルとメタル論(3)

BABYMETALの戦略

BABYMETALは、もともとはさくら学園というアイドルグループのサイドプロジェクトとして発足した。当初は、アイドルソングを手がける作曲家がメタル風の楽曲を提供し、通常のアイドルと同じくカラオケによるパフォーマンスが披露されていた。その当時は歴然としたアイドルであり、メタルファンとの接点は基本的にはなかった。

それが熱心なメタルリスナーであるプロデューサーKOBAMETALの戦略により、メタル系クリエイターが手がける楽曲を、敏腕ミュージシャンが生演奏するスタイルへと変更になった。さらにLOUDPARK等のヘヴィメタルフェスティバルに積極的に参加することにより、徐々にメタル系ファンを増やしていった。

しかし、その過程では当然ながら軋轢もあった。あまりにも規格外なBABYMETALのスタイルを、多くの古くからのメタルファンは受け入れ難いという反応を示した。世の常として枠に納まりきらないパフォーマンスは、往々にして批判にさらされてきたが、BABYMETALも例外ではなかった。

そんな批判とは裏腹に、BABYMETALはクオリティの高いパフォーマンスと楽曲を武器に海外までファン層を広げ、世界規模で注目を浴びる存在になった。賞賛と批判も含めてである。

アイドルとメタルの邂逅

カルチャーショックとしてのアイドル

BABYMETALの成り立ちが、売れることを目的にプロデュースされてきたと言われればそうかもしれない。多くのへヴィメタルの音楽とは成り立ちを異にしているのは間違いない。

しかし、BABYMETALがヘヴィメタルなのか違うのか、という議論はあまり意味をなさないように思える。アイドルとヘヴィメタルの嗜好性がそもそも違うし、音楽性を土俵に議論してもあまり噛み合わない。

アイドルというのは、その人物やグループのキャラクターイメージを中心にしてプロダクションの演出手法を含めた、広いエンターテイメントの意味合いを持つ。それがヘヴィメタルという文化を取り入れたことによってBABYMETALという化学反応が生じた。

時代背景もBABYMETALを受け入れる素地があった。僕が昔聴いていた80年代の頃のヘヴィメタルといえば、長髪のむさ苦しい男たちが髪を振り乱してシャウトしているのが一般的なスタイルだった。けど今は前回述べた通り音楽ジャンルの垣根がボーダーレス化している状況である。ヘヴィメタルといっても、これといった確固たるスタイルはなく、見た目のヘアスタイルやファッションも自由自在に洗練されているし、女性ミュージシャンも増えている。

より自由な表現を求められている時代背景の中、いささか(というかかなり)奇妙なパフォーマンスを繰り広げているBABYMETALは、海外ではそのアイドル文化も含めた独自性が注目を浴びるに至ったのである。まさにカルチャーショックとしての側面もあるのだ。

若い女の子のパフォーマー、息の合った振り付け、計算された演出等はアイドル文化が成熟した日本からでないと生み出し得なかった。観客を楽しませるというエンターテイメントという意味では積み重ねられてきた経験や人材が活かされたとも言える。

ジャンルと音楽

人によってどのような音楽が心地よく響くかは全然違う。音楽に何を求めるかも人によって違う。音楽というのは多分に感覚的なもので、感じ方で好き嫌いが出るのは仕方がないことだ。

僕にとってBABYMETALの音楽は幸いにして心地よく楽しく聴ける音楽だ。その音楽を奏でる技術と熱意をリアルで兼ね備えていれば、僕は興味を持てる。あまり格好や歌詞の内容は気にしていない。逆にアティチュードや歌詞にこだわりがあれば、聴くに堪えないかもしれない。

僕はBABYMETALに興味はあるが、他のアイドルの音楽には興味は持てない。自分には心地いい音楽ではないからだ。別にアイドルを否定しているわけではない。そのエンタメ性に熱中できれば、はまり込む人がいるのは理解できる。今後クオリティの高く心地いい音楽を演奏するアイドルがでれば興味を持つかもしれない。

かと言ってヘヴィメタルがアイドルより優れた音楽と思うかといえば別にそうも思わない。ヘヴィメタル=心地いいではないし、人によって感じ方が違う以上、優劣をつけること自体ナンセンスだ。好きか嫌いかがあるだけである。

あまりアイドルだとかメタルだとかジャンルに囚われることに意味はない。BABYMETALはBABYMETALである。自分がいいと思ったコンテンツを充分に味わって楽しめばいい。そのようなファンがBABYMETALには多くいるように見える。

異質なものとの出会い

違う文化と交わると、今まで出会ったことのない異質なものを目の当たりにする。その際、大抵戸惑いが生じるものだ。でもそれは自分の世界観を広げるチャンスでもあるのだ。異質なものを自分に取り込めれば、それだけ楽しめて味わえる幅が広がるということである。

日本では残念ながらヘヴィメタルが一般的に正しく理解されているとは言い難い。未だに“白塗りメイクの怖い人達が悪魔崇拝を歌っている”などと誤解されていることがある(別に白塗りだろうが、いい音楽を提供してくれるのなら一向に構わないと思うが)。イメージ先行で敬遠しているとすれば非常に勿体ないことだと思うのである。

皮肉なことに、型を重視して発展してきたアイドルが、型を壊すことで様々な議論を巻き起こしながら注目を得ている。その快進撃は充分に意義あることと思える。何事もまず興味を持てないと何も始まらない。

海外のファンがBABYMETALを通じて、日本について興味を持つかもしれないし、逆に日本の新たなファンがヘヴィメタルをもっと聴いてみようと思うかもしれない。これからも型をかき乱して、多くの人の印象に残るパフォーマンスを続けてほしいと思うのである。

BABYMETALの未来

METAL GARAXYの感想

最後に新作アルバムの個人的な感想と今後のBABYMETALについて述べてみたい。相変わらず3rdアルバム「METAL GALAXY」でも質の高い楽曲を提供している。特にDISK2の後半の流れは逸品である。ただ気になったのは、数曲メタルとはかけ離れた楽曲が含まれていたことである。打ち込み電子音が多用され、ユーロビートそのもののような曲もあり正直戸惑った。

メタルサウンドに寄った2ndアルバム「METAL RESISTANCE」では超技巧派バンドのドリームシアターを想起させる楽曲等があり、そこ来るかぁ!とメタルファンを感嘆させるような渋さがあったのだが、今作では曲によってはPerfumeを連想してしまう。別にPerfumeが悪いわけではないが、それではBABYMETALの核の特徴がなくなってしまう。一般のファンを獲得したいという思惑だろうか。そこはブレないでメタルに特化した楽曲を追求してもらいたい。

また神バンドの個性がだいぶ控え目になったのが気になる。最近のライブ動画を見てみると、バンドメンバーがマスクをして演奏をしている。BABYMETALにおいて神バンドは重要な要素である。僕の興味の半分くらいは彼らのパフォーマンスである。特に海外では神バンドの存在なくしては、間違いなくここまで注目を浴びなかったはずだ。マスクを外しソロパートを増やす等、個人的にはもっとバンドの個性を前面に押し出してもいいように思う。

今後の期待

あと根本的な懸念かもしれないが、メンバー自身の年齢が挙げられる。今年でsu-metalは21歳、moametalは20歳になる。写真や下の動画を見てわかるとおり、BABYと称するような子供らしさというよりは、LADYとお呼びしたほうが相応しい姿である。

「あたたたたた ずっきゅん! わたたたたた どっきゅん! ずきゅん!どきゅん!ずきゅん!どきゅん!」

といった歌詞を熱唱するには少々違和感がでてくる年齢である。しかし、アイドルの幼っぽさとメタルの荒々しさのアンバランスさがBABYMETALの魅力の肝でもある。アイドルのもつ宿命とはいえ、今後どのような演出がなされるのか興味深いところである。

いろいろと好き勝手に意見を述べさせてもらったが、僕としては尊敬の念を込めて書いてきたつもりである。新作の感想を述べようと思って書き始めたら、ついつい力が入って3回に渡って長々と続いてしまった。実際はこの3倍くらいの分量を語れそうだが、切りがないので止めておく。

ここ数年間、yuimetalの脱退、神バンドのメンバーが不慮の事故で他界する等、BABYMETALはいくつもの試練に見舞われた。その試練を乗り越えて、精力的にライブでは変わらぬパフォーマンスを発揮している。世界最大級の音楽フェスティバル、グラストンベリーのステージで堂々と日本語で歌い、観客を楽しませている姿は感慨深いものがある。是非今後もその雄姿を世界に魅せつけてほしい。

このシリーズのまとめ
‣BABYMETALはアイドルとメタルの融合をテーマに結成されたユニットである。
‣日本人のビルボードでの記録を塗り替えるほど海外で人気を博している。
‣その反面、奇抜なパフォーマンスゆえに従来のメタルファンからヘヴィメタルとして認めないという意見が頻出している。
‣Babymetal deathは自己紹介の曲death!
‣アイドルとヘヴィメタルは成り立ち、性質、音楽の方向性いずれも対極に位置している。
‣BABYMETALは音楽のみならず、日本独自のアイドル文化をメタルと融合したことにその特異性がある。
‣ジャンルにこだわるより、好きに思えるコンテンツを興味を持って楽しむことで、異質なものを取り込み自分の幅を広げることが出来る。
‣BABYMETALは、演奏能力や楽曲のクオリティが優れており、人々の印象に残るパフォーマンスを提供できる。
‣型にとらわれない、そのパフォーマンスは相互理解のきっかけとなる一翼を担っている。

 

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